シャープが鴻海精密工業から経営参加を条件に支援を表明したニュースが飛び込んできた。
いろいろな抵抗があるだろうがシャープにとっては鴻海精密工業の支援を仰ぐのがもっとも適切な企業再生の方法だろう。シャープがこうなってしまった窮境要因は①家電エレクトロニクス分野でデジタル化が進展したこと。むかしはテレビをつくるのも組み立て段階で部品をすり合わせる技術が必要だった。今の家電はOSの制御で部品を集めて組み立てれば完成する。素人でも組み立てPCを作ることができるように。サムスン電子などが急激にキャッチアップしたのはそういう理由。②もうひとつは鴻海精密工業に代表されるEMSの登場。EMSはどこかの系列にあるわけではなく、自分たちのつくった部品をどこにでも売る。そのため日本の下請け企業より大規模になり、低コストでの生産が可能になる。
シャープをはじめ日本企業は下請け企業系列をつくり自社の技術を囲い込むキーデバイス戦略を行ってきた。それが①のデジタル化で不可能になったばかりか、②のEMSの登場で下請け構造という高コストなやり方では競争に勝てなくなてしまった。
シャープは堺市に液晶の大型の工場を作った。いろいろな評論をよむと、その設備投資の失敗をシャープの苦境の原因にあげるが、本質的にはデジタル化の進展とEMSの登場が窮境要因なのだ。設備投資の失敗は、それが現象面で現れたにすぎない。サムスン電子などの韓国系企業が技術的に追いついたばかりか低コストで生産してきたから、当初の投資を補うだけの売上をあげられなかったのだ。
一方、日立や三菱などの重電インフラ系は家電と違いすり合わせの技術がいきる分野だったためシャープ、ソニー、パナソニックの家電3社のような落ち込みはなかった。パナは素早く住宅関連、自動車などの成長分野に舵を切れたし、ソニーは金融、ゲーム、映像というコンテンツ分野にも多角化していたので家電の不調をなんとかカバーして最悪の事態はまぬがれている。
今のビジネスモデルを続ける限りシャープに復活の道はないが、太陽光の事業も成果をあげられず、最後の手段はEMSの旗手鴻海から出資を受け、新しいビジネスモデルを模索するしかない。
シャープは以前、鴻海ではなくサムスンからの出資を選んだ。その理由は、鴻海が出資するときの株価の条件で折り合わなかったからと言われる。鴻海は堺工場のみは出資し、堺工場を立て直した実績があことは忘れてはならない。
ちなみアップルのビジネスモデルは自社の技術をオープンにする。しかし、自社はあらゆる製品のプラットフォームになるアイフォンのように。アップルはデザインや企画宣伝といった上部構造を担うだけでも、利益率は日本企業の比較にならない。これも日本の家電メーカーにひとつの指針になる。下請けで囲い込むではなく、技術をオープンにしてどの製品にも必ず使われるプラットフォームになる。インテルなんかも、一つの例ではある。