大塚家具の事業再生と事業承継

今回は世間を騒がせている大塚家具の骨肉の争いを解説します。

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経緯

赤字が続いていた大塚家具は2009年3月に創業以来社長を務めてきた大塚勝久氏が会長に退き、長女久美子氏が社長に就任します。
久美子氏はこれまでの大塚家具の高級路線を転換し、中価格帯に品揃えをシフトさせるなどの経営改革を実施します。翌年2010年の決算では黒字に戻りました。
2014年7月 この経営改革が自身の行ってきた経営に対する否定と受け取った勝久氏が久美子社長を解任します。この期の12月決算で赤字に転落したこともあり、今年の1月には久美子氏側が反撃、取締役会で自身の社長復帰と勝久氏を代表権を持つ会長にします。(共同代表です。)勝久氏はこれに対し久美子氏を取締役会からはずし自身中心の取締役会の構成にする株主総会への提案を決議。2月に入り久美子氏側が取締役会で勝彦氏を取締役からはずす提案を決議。今度は勝久氏が久美子氏の社長解任動議を取締役会決議。勝久氏記者会見で株主総会での同意を求めるという流れです。

経営動向

下は大塚家具とニトリの売上高の推移です。

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出展 ライブドアニュース BLOGS(大西宏)

大塚家具の売上が大きく低迷しニトリに水をあけられていることがわかります。
ニトリは、直近の26年2月期の連結決算では売上高が対前期比11.1%増の3,876億円、営業利益が630.7億円で、営業利益率は16.3%です。
一方、大塚家具は勝久氏が指揮を取った平成26年12月期で売上高は前期比1.3%減の555億円、4億円の営業赤字です。ちなみに久美子氏が指揮をとっていた25年決算も8億4,300万円の営業利益で、営業利益率は1.5%と収益性でもニトリに大きく水をあけられています。

 事業再生の視点から

ニトリと大塚家具はどうしてここまで差がついたのでしょう。大きな原因は外部環境の変化です。大塚家具は対面販売中心で高級化路線を取ってきました。しかし、デフレ経済が続き消費者の低価格志向がつづいた。そういう中でローコストオペレーションを行うニトリの低価格戦略に水をあけられてきたのだと思います。そして、そういう積もり積もったものがリーマンショックで噴出してしまったということでしょう。

そのなかで久美子氏はどういった経営戦略を取ったのでしょう。

大塚家具、中期経営計画(PDF)

➀まず、消費者の志向が大きな家具を買うというものから、家具を少しづつ買い足していくという状況に変化していること。住宅の新築需要は減っていきます。家を新築した。引っ越したのでついでにタンスも買い換えようという需要は減っていくとうことでしょう。住宅ストックは増加しているので日常生活で生じるインテリアアクセサリーなどの単品買い家具への需要は増加してると読んでいるのでしょうね。
➁競争環境としては低価格帯にはニトリのようなメインプレイヤーがいるが中価格帯にはプレイヤーがいない。ポッカリ席があいているということです。
そこで高価格帯・中価格帯の「単品買い需要」を呼び戻すというものです。また、そのために流通構造の改革や過度な接客をやめて人員のスリム化を図る一方で、住に関する店員の提案力を高めていくということでしょうね。

勝久氏の高級路線を取る場合はどうでしょう。一つは果たして大塚家具が高級家具であるというブランドイメージがどこまで浸透しているのか?という部分もあるでしょうし。店員の接客技術の問題もあると思います。私も大塚家具で接客を受けたことがありますが、店員がついては回りますが、家具に対する提案力が高いとまでは思いませんでした。久美子氏側の現経営陣は顧客アンケートでの「受付や接客に抵抗を感じる」という部分を問題視しているようです。接客に人を投入するにしても、それがお客様にメリットを与えていなければマイナス効果になってしまうでしょう。お客様への提案力を高めるような徹底的な社員教育をし直さないといけないかもしれません。もう一つは、高級路線のマーケットも安定して存在はしているが、市場はずっと小さいものだと考えるべきだと思います。高価格帯が売れる立地の店舗以外は閉鎖をよぎなくされる可能性もあるかもしれません。どちらにしろ、それはそれで大きなビジネスモデルの転換が必要であることは間違いありません。勝久氏の過去のやり方がそのまま続く時代ではなくなってきているような気がします。仮に、もし大塚家具が中小企業であれば、状況によっては高級化路線の徹底を図るほうが得策な場合があるかもしれません。市場が小さく大企業が参入しづらいほうが中小にはやりやすいからです。

現状の大塚家具の状況から考えると久美子氏側の経営戦略は現実的なような気もしますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?

 事業承継の視点から

今回は上場企業で中小企業との違いはありますが、一つの問題は一度引退した創業者が口を出してしまうところだと思います。
いつかは人は死にます。永遠に口を出すことはできないんです。それならば、どこかで踏ん切りをつけて後継者に任せてしまうしかないのではないでしょうか?よくあるのは、後継者が育ってこないために、いつまでたっても経営権を委譲できないケースです。親から見れば子は頼りなく見える場合もありますが、ある程度任せてみないと育たない部分もあります。代替わりの前から大きなプロジェクトを任せて経営者としての力をつけさせるしかないでしょう。

今回の場合は、久美子氏が頼りないという感じはしません。創業者である勝久氏の経営方針を否定したことが争いの原因です。世の中はどんどん変化していきます。会社がゴーイングコンサーンとして続いていくには、「環境に合わせて変化をしていく」ことが必須条件でしょう。事業承継はある意味経営力が低下するリスクもはらんではいます。2代目がダメ社長ならそうなります。一方、会社が変わるチャンスでもあります。実際に私のお客様でも事業承継後に売上が急拡大して3年連続の赤字決算から抜け出した会社もあります。

今回の大塚家具の事例は事業再生、事業承継両面で大きな示唆を与えてくれるかもしれません。成行きに注目しています。