大塚家具のニュースをもう少し追ってみたい。先日以下のようなニュースが出ていた。
ニュースの概要
大塚家具の経営をめぐり、父親である会長と娘の社長が争っている問題で、幹部や店長ら42名から会長を支持する署名が寄せられたことが日本テレビの取材で明らかになった。
会長を支持する文書には、「勝久会長が社長に復帰し、社内一丸となって業績向上に取り組むことが最重要事項」だと書かれ、全16店舗の店長らと約8割の幹部が、署名をしている。
大塚家具をめぐっては、1月に創業者の大塚勝久氏が社長を解職され、現在、娘の久美子氏が社長となっている。しかし、勝久会長らは、久美子社長の経営能力を否定しており、勝久会長の社長復帰を盛り込んだ株主提案を行っている。
一方、久美子社長側は、「社員は上司のためではなく、客のために働いている。社員を巻き込んだことを申し訳なく感じる」とコメントしている。
カリスマ創業者の2代目のやりにくさ。
なぜ、いっせいに従業員は先代社長を支持したのでしょうか?
それは、おそらく従業員の多くが先代社長である勝久氏に相当お世話になっているという点が一つ。もう一つは、創業者である勝久氏が一代でこの会社を大きくした。古くから知る幹部にとっては勝久氏はカリスマ的存在なのだろう。
娘の久美子氏はこれに対して「社員は上司のためではなく、客のために働いている。社員を巻き込んだことを申し訳なく感じる」と発言している。しかし、仮に久美子氏の路線が正しくても従業員の指示がなければ会社は変わることはできない。事業再生の現場でも経営改善計画は正しく、社長の支持をいただいていたとしても従業員の抵抗で計画がとん挫することはいくらでもあるのだ。
やむを得ないとはいえ、これまで大塚家具を引っ張ってきたカリスマである勝久氏と争い、なかば追い出す形で経営改革に取り組まなくなったことは、仮に久美子氏がプロキシ―ファイトに勝利したとしても大きな禍根として残るだろう。もちろん、長い時間をかけて従業員とわかりあうことが必要だが。
このようなことは通常の中小企業の事業承継でもよくあるカリスマ的な創業者のあとについた2代目は、古株の幹部から常に社長と比較されることになる。時代が替わり新しい方向に舵を切ろうとしても従業員を引っ張っていくことが難しくなるのだ。その場合には事業承継時に古手の番頭も社長と一緒に退いてもらい、逆に同年代の右腕を育ておくことが重要だろう。