BCP戦略の重要性ー災害は「事業停止」ではなく「経営環境」を変えるー

― 能登半島地震が示したBCPの本質 ―

能登半島地震は、多くの中小企業に直接的な被害をもたらした。しかし、より深刻なのは、被災そのものよりも、その後の経営環境の変化である。建物や設備が復旧し、事業再開が可能になったとしても、地域住民が戻らず、需要が回復しない取引先が他地域・他社へ切り替わっている地域経済全体が縮小しているといった状況に直面し、「復旧=回復」にはならない企業が少なくない。

一方能登半島地震の特徴は、需要が一様に減るわけではない点にある。

一部の業種では需要が消失する一方で、建設・修繕、設備の保守、自動車販売などでは、震災対応による一時的な需要増が発生している。しかし現実には、人手不足、資材・原材料不足により、需要があっても対応できない企業も多い。

同じことはコロナパンデミックでも起きた。新型コロナウイルス感染症に備え、国は「新型インフルエンザ等対策BCP」を整備してきた。そこでは、従業員が感染症に罹患した場合を想定し、出勤者を絞った2交代制や業務縮小による事業継続が基本的な考え方とされていた。しかし、実際のコロナ禍で多くの中小企業が直面した困難は、「従業員が感染したから事業が止まる」ことではなかった。

外出自粛や移動制限による需要消失、取引先の休業・倒産による受注減少等により、感染者が出ていなくても、経営環境の変化そのものによって事業継続が脅かされる事態が広範に発生した。

BCPで考えるべきは「環境変化への経営戦略」

コロナ禍、能登半島地震の両方に共通しているのは、感染や被災そのものよりもそれに伴う経営環境の変化が企業の存続を左右したという点である。BCPとはただ復旧することではなく、そのような経営環境の変化に対応する戦略をあらかじめ考える必要がある。いわゆるBCP戦略が重要になってくる。しかし、企業のBCPでは、このBCP戦略がおろそかになりがちである。
それどころか、BCPは総務課だけでつくり経営者が関与しないケースも珍しくない。BCPとは、総務・防災担当者が作成する書類ではなく、経営者が「危機下でどう経営するか」を言語化した経営戦略であるという認識を持つことも重要である。

中小企業診断士・BCPコンサルティング
竹上将人

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